エンタルピー、エントロピーとギブズ自由エネルギー
熱力学の入門
化学を学ぶ上で、化学反応中に起こるエネルギーの変化を理解することは重要です。熱力学は、これらのエネルギー変化を扱う物理化学の一分野です。熱力学の3つの基本概念は、エンタルピー、エントロピー、およびギブズ自由エネルギーです。これらのパラメータは、反応が自発的かどうか、エネルギー効率がどれほどかを予測するのに役立ちます。
エンタルピー (H)
エンタルピーは、内部エネルギーおよびその環境に対するエネルギーを含む、熱力学系の全エネルギーの尺度です。システムの「熱量」として考えられることが多く、H
で表され、化学熱力学で重要です。
エンタルピーの理解
最も単純な形では、システムのエンタルピー変化 (ΔH
) は、一定圧力で反応が起こる際の変化として表されます。この変化は、吸収または放出される熱に関連付けられることが多いです:
ΔH = H_{products} - H_{reactants}
ΔH
が負の場合、反応は発熱反応であり、熱を放出します。逆に、ΔH
が正であれば、反応は吸熱反応であり、熱を吸収します。
エンタルピー変化の例
簡単な反応、メタンの燃焼を考えてみましょう:
CH_4(g) + 2O_2(g) → CO_2(g) + 2H_2O(l)
この反応の ΔH
は約 -890 kJ/mol
であり、メタン1モルが燃焼するごとに 890 kJ のエネルギーを放出します。この発熱反応が、メタンが非常に効果的な燃料源である理由です。
エントロピー (S)
エントロピーは、システムの無秩序やランダムさの尺度です。システムが持てる構成の数についての情報を提供します。エンタルピーとは異なり、エントロピーはエネルギーのみならず、そのエネルギーの分布も考慮します。
エントロピーの理解
エントロピーは S
で表され、その程度の無秩序やランダムさと関連付けられることが多いです:
ΔS = S_{products} - S_{reactants}
エントロピーの変化が正 (ΔS > 0
) であれば、無秩序の増加を示し、負 (ΔS < 0
) であれば減少を示します。
エントロピーの視覚的な例
左のボックスは、粒子がより近くに密集しているより整然としたシステムを表します。右のボックスは、粒子が広がっている無秩序なシステムを表し、エントロピーの増加を示しています。
エントロピー変化の例
食塩の水への溶解を考えてみましょう:
NaCl(s) → Na^+(aq) + Cl^-(aq)
固体の塩が溶解すると、結晶性固体の整然とした構造は、溶液中のよりランダムに動くイオンに分解され、エントロピーが増加します。
ギブズ自由エネルギー (G)
ギブズ自由エネルギーは、プロセスの自発性を評価する熱力学的ポテンシャルです。これは、エンタルピーとエントロピーの変化のバランスです。ギブズ自由エネルギーは G
で表されます。
ギブズ自由エネルギーの公式
ギブズ自由エネルギーに関連する最も重要な方程式は次の通りです:
ΔG = ΔH - TΔS
ここで、T
はケルビン単位の温度です。
反応に対するギブズ自由エネルギー変化 (ΔG
) が負であれば、その反応は自発的です。ΔG
が正であれば、反応は非自発的です。
ギブズ自由エネルギー計算の例
再びメタンの燃焼を考えてみましょう:
CH_4(g) + 2O_2(g) → CO_2(g) + 2H_2O(l)
標準状態で、次のように仮定します:
ΔH = -890 kJ/mol
ΔS = +0.242 kJ/mol·K
T = 298 K
(室温)
ΔG
を計算します:
ΔG = -890 kJ - (298 K) × 0.242 kJ/mol·K
ΔG = -890 kJ - 72 kJ
ΔG = -962 kJ/mol
大きな負の ΔG
により、燃焼は非常に自発的であることが示されます。
ギブズ自由エネルギーの視覚化
ここでは、青い円が反応物を、赤い円が生成物を表しています。緑の下向きの曲線は、ΔG
が負である反応を示し、自発性を示します。
概念の組み合わせ
エンタルピー、エントロピー、およびギブズ自由エネルギーを組み合わせることで、化学者は反応の実行可能性と自発性を判断できます。負の ΔG
は、エネルギーの入力なしで反応が進行できることを示唆し、ΔH
および ΔS
の理解は、反応の性質、たとえば発熱反応と吸熱反応または整然/無秩序な遷移についての追加情報を提供します。
結論
要約すると、エンタルピー、エントロピー、およびギブズ自由エネルギーは、化学における熱力学を理解する上で重要な概念です。これらは、どの反応が起こりやすいか、および化学過程におけるエネルギーの変換方法を予測することを可能にします。これらのパラメータは、化学反応の最適化とエネルギー効率のためにラボや産業で継続的に分析されています。